前回はラテックスインクについてご紹介しました。
【関連記事:ラテックス・溶剤・UVインクの違いって?[第1回:ラテックス編]】今回は溶剤インクの特徴についてご紹介します。
印刷の仕組み
従来、溶剤系インクもしくはソルベントインクというと独特の溶剤臭に悩まされ、強制換気装置や有資格者の配置が求められる「すごいけど大変」な存在でした。しかし近年は「エコソルベント」「低臭」「マイルドソルベント」などの名前を冠した、低臭気の溶剤系インクが各社から発表され、置き換えが進んできました。弊社のMimaki製JV34-260もGREENGUARDを取得した低臭気インクです。
つきましては、この記事でも主に低臭気の溶剤インクについてご説明していきます。
LATEXインクが水分とラテックスを溶媒の主成分としているのに対し、溶剤系インクは薄い有機溶剤中に顔料が含まれています。
印刷する塩ビやターポリンの表面にインクが着地するとまず溶剤成分がメディアの表面を侵(おか)します。つまりメディアの表面を溶かして、少しメディアの内側にインクが入り込むわけです。その後、ヒーターでメディアの裏から温めてあげることで溶媒が蒸発し、顔料がメディアとがっちり喰い付き高い耐候性を発揮します。
しかしLATEXに比べ、この溶剤を飛ばす工程に少し時間がかかります。
LATEXは印刷直後(乾燥パーツから出てすぐのところ)の印刷表面を触っても手にインクは付きませんが、溶剤は少し湿り気があります。印刷直後はまだ完全には乾いていません。
弊社でもラミネートや縫製などの後加工に入るには、一晩かそれ以上風をあてて乾燥させています。メーカーによりまちまちですが、概ね数日から1週間くらいで溶剤が完全に蒸発しますので、逆を言えばその間は溶剤独特の匂いが印刷物から漂うことになります。
この乾燥が不足しているとラミネートと塩ビの間に浮きが出る事故につながります。
色の種類
高発色の特性を更に発揮すべく、メーカーも独特なインクを開発しています。
LATEXやUVが不得意な赤やオレンジ、グレーなどといった色合いが綺麗に出るのが特徴です。また白インクを搭載する機材も多く、ウィンドウフィルムなどの用途でも活用されています。
印刷できる素材
メディア(インクジェット用に作られた素材をロール化したものの総称)は「溶剤用」として販売されているものを使用します。
ターポリンはもちろん、白度の高い塩ビに印刷すると綺麗です。傷防止やUVカットのため、塩ビはもっぱらコールドラミネートされて看板などに貼付けられます。
素材名 | 最大幅 (mm) |
用途 |
ターポリン | 1880 | 足場シート、車両幕、 |
メッシュターポリン | 1880 | 工事現場横断幕、 |
厚手ターポリン | 3200 | 超大型幕 |
グロス/マットターポリン | 2070 | 店頭幕、タペストリー |
塩ビ | 1370 | シール、看板 |
両面ターポリン | 1880 | 街灯フラッグ、タペストリー |
反射シート | 2250 | 高速道路沿いなどの反射する幕 |
溶剤インクの特徴
発色が綺麗
前述のとおり、高い耐候性に加え高発色なのが特徴です。化粧品や飲食業、食品メーカー様向けのタペストリーや幕類はこの機材で出力することが多いです。
インクが7,8色程度あるのは普通で、高級機になると10色のインクタンクが付いているため、非常に精細で綺麗な画像を描くことができます。
反射材にも印刷できる
これは弊社の使い方ですが、高速道路や幹線道路沿いで見かける"反射する幕"、あの印刷をするのに最適なのが溶剤インクです。反射シートに文字を印刷するのですが、他のインクだと印刷部分の反射性が落ちてしまうのに対し、溶剤インクだと印刷部分が反射性を保ったまま幕全体が反射して光ったように見せることが可能なのです。
詳しくはこちら blog:夜間でも明るく反射する幕・アイテム類作れます(高輝度反射ターポリン)
まとめ
匂いはあるものの、高い発色性で写真をぐっと綺麗に魅せることができる。また反射シートなど独特な印刷をして、道路沿いに掲出しておいても耐候性も高い。そんな溶剤インクのまとめでした。
弊社ではお客様のご要望が特にない場合でも、幕の用途やデザイン、ご使用予定期間・納期などに応じてLATEXや溶剤、UVインクを使い分けて最適な印刷物をお渡しできるよう心がけています。
次回第三回はここ数年で急速な広がりをみせる「UVインク」についてご紹介します。
詳しくはこちら blog:ラテックス・溶剤・UVインクの違いって?[第3回:UV編]